監修

インテリジェント ライセンスの監修者は、京都大学・子安増生教授。


 心が単一のものでなく、相対的に独立して機能する7つほどの知能から構成されると考える“心のモジュール説”にもとづき、“心”の働きとその発達に関する心理学的研究を展開されております。
このゲームが従来の“紙と鉛筆型”知能検査を越える可能性を見抜き、測定されるPQ値にお墨付きを与えていただきました。




監修のことば
 2005年は、知能検査というものが開発されてちょうど100年目にあたります。この記念すべき年に「インテリジェント ライセンス」が発売されたことを大変喜んでいます。



 歴史をひもといてみますと、フランスの精神科医・心理学者のアルフレド・ビネーが世界で初めて実用的な知能検査の開発に成功したのが1905年のことです。ビネー式の検査は、わが国でも早くから翻訳され、その後も独自の改訂を経て、もちろん現在も使われています。



 ビネーは、人間の個人差にもきちんと目を向ける柔軟な学者でしたが、知能検査が世界中に普及する中で、「知能は遺伝的で固定的である」とする誤った知能神話が、教育界や産業界を支配しました。しかし、1970年代以後、知能に対する考え方に大きな変化が生じました。かんたんにいいますと、知能を「学校知能」という狭い場所に閉じ込めることなく、広く社会のさまざまな場面で役に立つ「実用知能」を重視すること、その具体策として「紙と鉛筆の検査(ペーパー・アンド・ペンシル・テスト)」から脱却することなどの動向がそうです。

 インテリジェント ライセンスの第一の特徴は、テレビゲームの世界で知能の測定を実現しようとした点にあります。テレビゲームの特性からして、紙と鉛筆型検査ではありえません。このゲームでは、仮想空間の中で、サバイバルのために、さまざまな能力を活用することが求められています。


 第二の特徴は、世界標準であるということです。ある言語的文化的環境の中で作成された知能検査を別の言語的文化的環境の中で用いるためには、翻訳というフィルターを通さなければなりません。そのため、特定の言語的文化的環境にいる人に有利とか不利という問題が避けられないのです。インテリジェント ライセンスは、テレビゲームという基盤に立つことによって、この問題をかなりクリアしました。だからこそ「世界ランキング」というものが成り立つのです。
 第三の特徴は、何と言っても「楽しい」ということです。このゲームの監修の過程で、ナウプロダクションのゲームデザイナーとゲームクリエイターの皆さんが、ゲーム作りにまじめに取り組んでいるだけでなく、遊び心を持っていることを実感しました。巡回ガードマンのライトなど本当にこわいですね。


 このゲームの構想を最初に聞いた時に、まず私が連想したのは『ポセイドン・アドベンチャー』という1972年のアメリカ映画でした。豪華客船ポセイドン号が大津波で転覆し、10人の男女がさかさまになった船室をくぐりぬけて、上部すなわち船底に脱出しようとします。リーダーの牧師は、神頼みでなく人間の知恵と力で苦難を切り抜けるべきだと言います。かよわくみえる女性も、まだ小さな子どもも、それぞれの力を出しあって次々に押し寄せる危機に立ち向かいます。知能が持つ本来の力とはそのようなものではないでしょうか。インテリジェント ライセンスで鍛えた力が、実生活でも生かされることを願ってやみません。


 プロフィール
子安増生 京都大学教授(心理学)


京都大学教育学研究科・教授。博士(教育学)。認知心理学の実験的方法を用いて、認知発達、知能の研究を進めている。著書:『生涯発達心理学のすすめ』(有斐閣)、『心の理論』(岩波書店)など多数。